合同会社とは?メリット・デメリット、株式会社との違いをわかりやすく解説
合同会社ってどう?株式会社との比較も交えて選定を
昨今「合同会社」を選択する場合も増加してきています。創業手帳は株式会社ですが、創業者の大久保は合同会社を設立した経験もあります。
実際に設立した経験をもとに、合同会社とはどんな法人形態なのか、メリットやデメリットもわかりやすくまとめました。よく比較される株式会社との違いも要チェックです。
合同会社での起業に必要なのはズバリ情報収集です。まずは創業手帳(無料)を読んで起業前後にやるべきことをインプットしましょう。融資から税金、ビジネスノウハウまで、一冊に集約しました。
起業の準備は多岐にわたるため、煩雑になりがちです。無料の創業カレンダーを使えば、以下のようなカレンダー形式でいつなにをすべきかが一目瞭然になり、起業の準備がスムーズに進みます。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次 [閉じる]
合同会社とは?特徴などを解説
合同会社は、2006年の会社法施行によって新たに作られた法人形態で、合資会社・合名会社とならぶ持分会社の一種です。1977年にアメリカで誕生した法人形態で、「LLC(Limited Liability Company)」とも呼ばれます。
合同会社の特徴を以下の表にまとめました。
設立費用 | 6万~10万円程度 |
---|---|
出資者が負う責任 | 出資額を上限とした有限責任 |
役員の任期 | 決まっていない |
経営権の所在 | 出資者(経営者および社員と同一)にある |
合同会社は小さなスケールで始めやすい会社形態です。設立費用の安さ、経営の自由さなどから、意思疎通がしっかりできる仲間内や個人での会社立ち上げに向いています。
なお合同会社とは持分会社の一つです。会社の種類は会社法において「株式会社」と「持分会社」の2種類に分けられるほか、組織形態の分類としては「一般社団法人」「NPO法人」もあります。
設立費用
合同会社を設立するには約6万円〜10万円が必要です。主な費用には次のものがあります。
項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | いずれか高いほうの金額
・資本金額 × 0.7% ・6万円 |
定款の印紙代 | 定款の形態によりいずれかの金額 ・電子定款:0円 ・紙の定款:4万円 |
合計金額 | 6万円~ |
登録免許税とは登記手続きにかかる税金です。資本金100万円の場合0.7%をかけると7,000円なので、登録免許税は6万円になります。
会社の設立には必ず定款を作らなくてはなりません。定款は課税文書であるため印紙が必要ですが、電子定款であれば印紙は不要です。
これまで合同会社を設立した経験から、実際には専門家にサポートを受けたほうがいいため、サポート費用を上乗せした10万円までを目安としています。
出資者が負う責任
合同会社の出資者は、出資額を上限とした有限責任を負います。有限責任であるため、例え出資額では足りない負債を会社が抱えたとしても、出資者個人が抱えることはありません。
有限責任とは反対に無限責任の会社形態もありますが、この場合は出資額以上の負債が発生すると個人の財産にも影響を及ぼします。
合同会社と比較されやすい株式会社も有限責任です。いずれも責任は出資額までにとどまるため、リスク管理がしやすくなります。
役員の任期
合同会社は役職の任期についての規定がなく、同じ人物が何年も役員でい続けられます。役員の氏名や役職が変わらない限り、登記変更は不要です。
なお、合同会社の役職とは株式会社の役員と同じものです。
経営権の所在
合同会社では、経営権を持つ「経営者」「出資者」「社員」が同一です。出資者は経営者でもあり、社員でもあります。株式会社でいうところの株主と同じです。
出資額に関わらず1人1票の議決権を持つため、出資金額による力の差はなく多数決で意思が決まります。
出資額は会社の持ち分比率に影響を与えるものの、株式会社のように保有株、つまり出資額で経営権の所在が変わることはありません。
合同会社のメリット
合同会社のメリットは以下になります。詳しくは後ほどご説明していくので、先に一覧で確認しましょう。
- 設立費用が株式会社より少ない
- 会社の維持コストが低い
- 出資者のリスクヘッジができる
- 議決権や配当が出資額に左右されない
- 組織運営の自由度が高い
- 法人化の節税効果を得られる
設立費用が株式会社より少ない
合同会社は株式会社に比べて設立費用が安く済みます。費用がもっとも安く済んだ場合で比べてみましょう。
合同会社 | 株式会社 |
---|---|
・登録免許税:6万円~
・定款の印紙代:0円(4万円) |
・登録免許税:15万円~
・公証人による定款認証:0円(5万円) ・定款の印紙代:0円(4万円) |
合計:6万円~ | 合計:15万円~ |
※カッコ内は紙での手続きの場合
どちらの会社でも主な費用は登録免許税で、株式会社は安くても15万円です。合同会社の2倍以上を払わなくてはなりません。
株式会社の場合は定款認証も必要ですが、電子認証であれば0円で済みます。定款そのものも紙ではなく電子であれば、どちらの会社形態でも印紙代は不要です。
なお、創業手帳の創業者である大久保は、起業家の負担を軽減するために内閣府の委員として起業に係る制度設計への助言をしていますが、まだまだ費用面でのハードルがあるのが実情です。
会社の維持コストが低い
合同会社は会社の維持コストが低い傾向にあります。特に株式会社と比べると、決算公告の義務がない、役員の任期に決まりがないといった点で有利です。
決算公告とは決算内容を公開することで、決算書の準備や公告に伴う費用がかかります。任期を終えた役員の登記を変更する際にも、選定の手間や登記費用を見込んでおかなくてはなりません。
合同会社ではこうしたコストを抑えられるため、リソースの少ない会社でも維持しやすいメリットがあります。
出資者のリスクヘッジができる
合同会社の出資者は全員が有限責任者です。出資額以上の責任を負うことはないので、リスクヘッジできます。
仮に個人事業主(フリーランス)のまま事業を立ち上げて失敗し、出資額以上の負債を抱えると、すべて個人で返済しなくてはなりません。
よく会社のほうがリスクが高く、個人事業主のほうがリスクが低いと思われがちですが、法律的な実態では逆です。合同会社のほうがリスクの範囲が有限なので、事業を中断しても個人で責任を取る必要がなく、経営者が守られます。
議決権や配当が出資額に左右されない
合同会社の出資者が得られる議決権や分配利益は、出資額に左右されません。
議決権は原則1人1票、分配利益は会社によって決めておけます。いずれも定款で設定し、変更も可能です。
たとえば「出資金額にかかわらず均等割」「利益に貢献した人に加重して配分」など、会社の事情に応じて考えることができます。
複数の経営者がいる場合も、出資額の差で経営バランスが崩れる心配がありません。
組織運営の自由度が高い
合同会社の場合は、会社の事情に合わせて定款で組織のあり方を決めることができます。これは「定款自治」ともいわれ、合同会社の自由度や意思決定のスピードにつながるメリットです。
たとえば「出資だけする人」「出資と経営両方を行う人(業務執行社員)」を分けることや、代表社員を定めるか否かなども柔軟に考えることができます。
さらに出資者と経営者は同一であるため、株式会社のように株主への説明や決議をあおぐ工程がいらず、事業の意思決定がスムーズです。経営実態を握る人が直接かじ取りをすることができます。
節税効果などの恩恵を得られる
合同会社をはじめ、法人化すると個人事業主にはない大きな節税効果を得られます。法人化すると経費の範囲が広がったり、納める所得税が軽減されたりするためです。
補助金や助成金といった制度には、個人事業主では利用できないものがあります。法人化していればさまざまな制度が活用でき、事業に役立てることが可能です。
合同会社として法人になれば、課税事業者になった際に消費税の免除期間があるのも見逃せません。そもそも課税事業者になるべきか迷っている場合は「インボイス登録ガイド(無料)」を参考にしてください。職種別に登録の是非がわかります。
合同会社を設立するデメリット
こちらでは、合同会社を設立するデメリットを解説します。
- 資金調達の選択肢が少ない
- 出資者の関係構築が必要になる
- 知名度・認知度が低い
- 権利譲渡・相続・事業承継がしにくい
資金調達の選択肢が少ない
合同会社には株式がないので、株式を買ってもらう出資など、広く大規模な資金調達はできません。創業手帳の無料相談では「合同会社で出資調達ができるか」という相談もありますが、出資での調達は基本的に株式への出資となるのでできません。
また、ベンチャーキャピタルのように株式上場や値上がりの利益を狙うファンドの投資対象にもなりませんので、資金の調達方法の選択肢は限られます。
とはいえ、融資や寄付購入型のクラウドファンディング、ファクタリングなどの資金調達は可能です。調達できる金額の中で事業を行えるのであれば、合同会社でもよいということになります。
冊子版の創業手帳では、創業時の融資先としておすすめな日本政策金融公庫の融資制度について、詳しく解説している資料を無料配布しています。融資成功率を上げるコツも必見です。
出資者の関係構築が必要になる
合同会社で出資者が複数いる場合、関係構築が欠かせません。議決権や利益の分配に出資額が絡まないゆえに、何を基準として決議するのか、利益を分けるのかを明確にしておく必要があります。
基準をしっかり決めておかないと、誰かが満足できない配分になったり、対立して収拾できなくなったりし、経営維持にもマイナスです。
良好な人間関係の構築や、丁寧に合意形成する努力が求められます。議決権や利益の配分について定款に定めておくことも必要です。
知名度・認知度が低い
合同会社は2006年に創設された制度なので、まだ20年に満たないほどの歴史しかありません。そのため世間的には知名度が低く、信用してもらいにくくなります。
合同会社の代表者を定めた場合の肩書は「代表社員」です。「代表取締役」という表現は使えないため、人によっては肩書を見てもピンとこないケースがあります。
お客様から「何かが合同してできた会社なんですか?」と聞かれたりするだけでなく、場合によっては融資などの資金調達にも影響しかねません。
権利譲渡・相続・事業承継がしにくい
合同会社は会社法第585条1項にもとづき、社員すべての合意がない限り社員の持ち分の一部または全部の譲渡ができません。事業承継も同様で、合同会社の社長が亡くなっても相続人は相続できず、死亡した社員は退職扱いになってしまいます。
相続させたい場合は、定款に「出資者の地位が相続の対象となる」と書き加えておかなくてはなりません。一人社長が死亡すると会社は解散になるため、会社の消滅を防ぐために社員を複数にしておくことが必要です。
株式会社では、上場企業の株式は自由に譲渡できるほか、株式の相続もできます。
合同会社を作るなら”ココ”にこだわるべき
メリットとデメリットを理解し、合同会社のイメージが固まったら、こだわるべきポイントも知っておきましょう。
最初でつまずかないよう、設立前に入念な準備が不可欠です。
定款に定めるルール
合同会社を立ち上げる際は、議決権や利益の分配方法など、揉めやすい要素を定款にしっかり定めておくのが大切です。
定款には「任意的記載事項」という項目があります。法的に記載義務はないものの、会社独自のルールを設けたいときに書いておけば、効力が認められる要素です。
合同会社の立ち上げ時には任意的記載事項を活用して、決まりごとを定めておきましょう。特に複数人の出資者がいる場合、多少細かくてもトラブルを防ぐために必要となります。
業種や事業の適合性
業種や事業との適合性を踏まえて合同会社を立ち上げるのもポイントです。合同会社のメリットが最大限に活かせるかを考えてみましょう。
たとえば一人社長や個人事業主から法人成りしたいときは、リスクを少しでも減らすのが得策です。設立や維持のコストが低い合同会社ならリスクヘッジになり、適合性が高いといえます。
業種でいえば、小規模でも始めやすいIT・Web系の事業、コンサル業、個人のスキルを活かせるクリエイティブ業なども相性がいいでしょう。
資金調達の可能性と方法
合同会社は株式会社に比べて資金調達の方法が限られています。そのため設立後に資金調達の可能性はあるのか、ある場合の方法も検討しておくのが無難です。
資金調達の可能性をはかるには、具体的な事業計画を策定した上で必要な資金を試算しておきます。
社員の出資や自己資金だけで十分なのか、融資や補助金などを見越して考えるのか、事業計画をもとに練っておきましょう。
合同会社設立までの具体的な手順をわかりやすく解説
定款の作成や必要書類の準備など、合同会社を設立する手順を解説します。
- 定款作成
- 資本金の払い込み
- 登記書類の作成
- 登記申請
- 登記後の各種行政などへの手続き
下記で詳しく説明していきます。
1:定款作成
会社名、本店所在地、事業の目的、資本金額など、法人設立に必要な事項を決め、定款を作成します。
定款は電子定款(電子署名したPDFファイル)として作成すると印紙税を節約可能です。
2:資本金の払い込み
資本金を出資者の口座に払い込みます。まだ法人が設立できていないので、この段階では出資者の個人口座に払い込んで構いません。
3:登記書類の作成
法務局に提出する書類の作成と、必要な書類を準備します。
登記申請書、登記すべき事項、定款、印鑑届書などが必要です。
必要なもの一覧 |
---|
会社設立登記申請書 |
定款 |
印鑑届書 |
代表社員就任承諾書 |
本店所在地決定書 |
登記用紙と同一の用紙 |
社員の印鑑証明書 |
払込証明書 |
収入印紙 |
4:登記申請
作成した登記書類を法務局に提出します。
このとき登録免許税を納付するのに、金額分の収入印紙が必要になります。登記申請書を法務局に提出した日付が会社設立日となりますが、登記手続きの完了までは数日かかります。
5:各種行政などへの手続き
登記手続き完了後、税務署、都道府県税事務所、市町村役場、社会保険関係(年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク)などに必要な手続きを行います。
なお、より詳しく具体的な手順を知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
実際に作ってわかった!合同会社と株式会社の違い
株式会社と合同会社の違いは「経営と出資の関係」や「組織のあり方」にあります。会社の成長や資金調達の方法にも影響するため、どちらがよいのか事前に判断することが重要です。
合同会社から株式会社に変えることもできますが、手続きが煩雑な上、資金調達のタイミングを逃す可能性もあります。
これまでの経験から会社の形態を変えている事例はあまり見かけないので、違いをよく把握して後悔しないようにしましょう。
基本的な性質の違い
合同会社と株式会社の基本的な性質差を見てみましょう。
比較項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
資本金 | 1円~ | 1円~ |
設立に必要な人数 | 1人~ | 1人~ |
設立費用 | 6万円~ | 15万円~ |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 |
経営者 | 出資者 | 株主が選定 |
代表者の肩書 | 代表社員 | 代表取締役 |
利益の配分 | 原則自由 | 株数に応じて配分 |
決算公告 | 不要 | 必要 |
共通点もいくつかありますが、経営権の所在や利益分配の仕組みなど、組織として重要な部分に両者の違いが表れています。
創業手帳で毎月の法人の設立状況を見ていますが、株式会社と合同会社で半々くらいです。小規模なら合同会社、拡大を狙う場合には株式会社を選択する傾向があります。
資金調達の方法の違い
合同会社と株式会社とでは、選べる資金調達の方法にも違いがあります。
方法 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
社債 | 〇 | 〇 |
転換社債型新株予約権付社債 | × | 〇 |
新株発行 | × | 〇 |
金融機関の融資 | 〇 | 〇 |
個人・法人の出資 | 〇 | 〇 |
ベンチャーキャピタルの投資 | ×(地方創生ファンドなどファンドの目的によっては対象となるケースがある) | 〇 |
株式上場 | × | 〇 |
M&A(合併、買収) | 〇 | 〇 |
資金調達の手段が幅広く、規模も大きいのは株式会社です。株式会社ならできる資金調達も、合同会社だとできないケースが多くなります。
創業手帳のこれまでの経験から、事業拡大を狙っていたり、採用を進めたりしたい企業は株式会社を選ぶ傾向です。資金調達の予定がなくても、多くの場合は社会的な信頼性の面から株式会社を選んでいます。
資金調達のメリットより、経営の自由度などを優先したい場合は合同会社を選ぶ意義が大きいでしょう。方針が変わった際には、株式会社への変更も可能です。
向き不向きの違い
合同会社か株式会社か、向き不向きの違いもまとめました。どちらが自分のビジネスに合っているか、違いを見比べて検討しましょう。
比較項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
顧客のタイプ | 個人中心 | 法人中心 |
事業の主体となるもの | 人がメイン | 商品がメイン |
費用負担 | 低コスト重視 | 多少は許容 |
事業の規模< | 小~中規模 | 中~大規模 |
多額の資金調達 | 不要 | 必要 |
株式上場の希望 | なし | あり |
立ち上げたい会社の条件が合同会社と株式会社のどちらに多いか、チェックしましょう。あてはまる項目が多い方を選ぶと、理想の会社に近づきやすくなります。
現状だけではなく、将来的な展望も踏まえて選ぶのがポイントです。
合同会社から株式会社に移行できる?
合同会社でスタートしたけれど、途中で株式会社に変えたくなった……そんなときは、会社形態の移行が可能です。
移行の際に必要な準備を押さえておきましょう。
項目 | 概要 |
---|---|
移行にかかる費用 | ・公告費用:約3万円
・登録免許税:約6万円 |
移行に必要なもの | ・組織変更計画書
・登記申請に必要な書類 |
移行の手続き | ・全社員から組織変更計画書の承認を受ける
・債権保護手続きをする ・登記申請する |
合同会社の規模が大きくなってくると、株式会社へ変更した方が得られるメリットが多くなります。資金調達の広範化や信用度の向上など、企業の持続的な発展を目指すなら移行を検討しましょう。
まとめ・合同会社の特徴を理解した上で設立しよう
合同会社を設立する際は、創業メンバーや出資者・投資家などと、会社との関係のあり方や将来像をイメージしながら選択しましょう。
創業手帳では、会社設立について有益な情報をWEBでも数多く提供していますので、無料相談などを含めぜひ利用してみてください。
起業に必要なものは幅広く、漠然としがちです。冊子版の創業手帳で必要なものを一つひとつチェックすると、ビジョンが明確になります。起業家のインタビューを参考に、起業後の自分をイメージすることも可能です。
起業の準備は時系列に整理しましょう。無料の創業カレンダーでいつなにをするかを書き込み、順番にこなすだけでスムーズに起業準備が進みます。
(執筆:創業手帳編集部)